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        一新塾ニュース〜今のニッポンを変えろ!
         【第296号】 発行日:2007年8月14日
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目次 ■ 塾生活動レポート

   『 高齢者支援の現場から 』 一新塾第19期 土屋ひろみ 氏

   ■ 第21期説明会始まりました!

   東京、名古屋、大阪 福岡(新拠点)で開催します!

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メルマガ読者の皆さま、こんにちは。事務局の森嶋です。
数回に渡って、大阪、金沢、倉敷と、地域で活躍する一新塾生の
取り組みをご紹介させていただきましたが、今回は盛岡で高齢者支援
の現場で奮闘されて いらっしゃる土屋ひろみさんよりメッセージを
いただきました。

コムスンの不正申請問題など、介護業界の構造的問題がクローズアップ
されていますが、介護の現場では、頑張っていらっしゃる方がたくさん
いらっしゃいます。 一新塾生の土屋さんもそのお一人です。

土屋さんは、現場で一人ひとりの高齢者の方と向き合いながら、
地域社会で高齢者を見守り・支援し、誰にとっても安心して生活できる
社会ができるよう、コミュニティー再生に向け、奮闘されていらっしゃ
います。

■■■塾生活動レポート ----------------------------------------
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■   『 高齢者支援の現場から 』

                      一新塾第19期通信科
                         土屋 ひろみ

わたしは岩手県盛岡市の地域包括支援センター(以下包括)という
ところで働いています。包括は介護保険で市町村ごとの設置が定められ、
高齢者の総合 相談、介護予防、高齢者をめぐるネットワーク作り・
地域づくりをその仕事としています。
多くは市町村直営ですが、当市は民間に委託しています。

●この仕事についたきっかけ

わたしは学生時代より、ソーシャルワーカーとして相談援助の仕事に
就くことを望んでいました。小学生が中学生になるような安易さで、
わたしは学生から ソーシャルワーカーになりました。
高齢者の福祉分野に就いたのもたまたま、 高齢者分野の職場が多かった
からです。

● 一新塾へ入塾

高齢者もまたたくさんの不安を抱えて生活しています。
独居の高齢者宅を回ってお話を伺うと、「こんなにお元気なのに」という
方からも、孤独死への不安が多く聞かれます。悪徳商法、オレオレ詐欺など
高齢者を狙った 犯罪が、日常のものになってきていると感じています。

また認知症の予防と支援も、 今後ますます重要です。高齢者の生活は、
他の人の支えがなくては成り立たない、 というのが実感です。
地域の活動を進める上で、ヒントを得られればというのが入塾の動機です。

また自分にとって「聞く」と同じくらい重要なキーワードが「変える」です。
介護の現場の待遇は低く、ぎりぎりの職員配置で、入所者の認知症の進行や
精神症状により、業務は過酷さを増していきます。優れた実践を行いながら
離職を余儀なくされる介護職員も数多くあります。

現在全国で150万人といわれている認知症高齢者は、2015年には
250万人になるという推計もあります。地域全体が認知症を理解し、
誰にとっても安心して生活できる場所となることが求められています。

● 高齢者と向き合う  

包括の仕事は、二つの側面を持ちます。
一つは相談を中心とした個別の支援、もうひとつはコミュニティーへの
はたらきかけです。 介護が必要な方やそのご家族が、生活上の様々な
大変さを軽くして、少しでも 安心して暮らして頂けるように様々な資源
を活用していくのが個別の支援です。

その中には高齢者の権利擁護(成年後見等)、虐待対応といった困難度
の高い課題もあります。高齢者虐待は、虐待行為の定義の共通認識を
形作っているような段階にありますが、現場では常に対応に迫られます。

虐待の背景 には介護疲労や経済的困窮、認知症、以前からの家族関係等
困難かつ複雑な 課題があります。困難な課題を抱えるご家族は、感情的
な混乱が深く、意志決定に時間とプロセスが必要な場合もあります。
巻き込まれずに支えるためには、担当のケアマネジャーや地域の民生委員
といった関係者のチームの力が不可欠 です。

認知症高齢者は、認知や対処の機能は低下するものの、感情面の機能は
比較的よく保たれ、不安感が強く、周囲(特に家族)の気持ちに過敏で
あることが知られています。認知症ケアはここ数年で飛躍的な進歩があり、
安心して生活 できる環境が、症状の進行抑制に効果的であることが
実践で示されています。

特に認知症高齢者のためのグループホームでの実践は、利用者本位、
ケアの質 という点で、最先端にあるといえます。
被害的な訴えの裏に あるご本人の気持ち (遠慮や自責感の強い場合、
被害的な言動につながることがあります)を汲み取り、 それをケアの
改善へとつなげていく。そんな対応が標準化されつつあります。

●「聞く」ということ  

わたしのような相談援助に関わる人間にとって、「役に立つ」という
ことは、目標でありながら大きな落とし穴です。常に解決を迫られ
ますが、自分が解決したとか自分がして上げたからと思うことが、
解決を遠ざけてしまうことが よくあります。
怖いので、自然とそのような考えを避けるようになります。  

一方「聞く」ことから、わたしが得たことは、計り知れません。
会う方たちは、お一人お一人本当に異なります。同じことばを言っても
同じ 内容や意味ではないのです。その方の世界に踏み込ませて頂ける
ことを、いつも 感謝しています。そしてお話を伺う時、わたしが
最も焦点をあてているのは、その方の気持ちです。

理解しようと努める時、わたしの探知できる力には限りがあります。
でも、「ああそうか。」とわかる時があります。
それはとても素晴らしい体験です。その方のひとことひとこと、表情、
しぐさ、わたしは 見過ごすことのないよう、とても集中しています。
それがわたしにとって、 『聞く』ということです。  

● コミュニティーへのはたらきかけ  

高齢者の見守り・支援は地域の方の支えによるところが大きく、
「ご近所再生」は包括の仕事のもうひとつの中心です。
町内会単位の取り組み をとアプローチしていくと、行政から町内会へ
移譲されている課題の多さ、大変さと、町内会自体の高齢化、
担い手不足等硬い地盤にぶつかります。
多大な負担を負っている町内会長は「包括とは何だ、何ができるというんだ」
という反応です。また町内会長の行政に対する不信もあります。  

まず今年は、地域のケーブルTVの協力を得て、地域のお達者高齢者、
高齢者 グループを紹介する番組を作ることになりました。各町内会に
協力を依頼、 各町内会とのコミュニケーションを図っていきたいと考えて
います。 また学校へ出かけ、授業やPTA活動でもアピールする機会が
得られるよう、準備を進めています。  

わたしにとって包括の仕事は、目的ではなく手段です。 コミュニティーの
機能を再生することは、誰にとっても必要なことだと思います。
個が尊重される相互依存の社会、福祉の目的は、そのような社会の実現だと
考えています。そのために『聞き』、あらゆる方法を尽くします。

高齢者福祉も地域間格差が激しい状況にあります。
今後の活動について、皆様のお住まいの地域の状況からも、ぜひ色々教えて
いただければと願っております。



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