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 一新塾ニュース~今のニッポンを変えろ!

    【 第468号 】 発行日:2011年12月1日

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■ 塾生活動レポート

『阿蘇にUターン』
 ~見兎の森プロジェクト始動!

                一新塾第27期本科 早野慎哉

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メルマガ読者の皆さま、こんにちは。一新塾の森嶋です。
11月6日に第27期東京本科を卒塾された早野慎哉さん。

この1年、早野さんの地元である阿蘇を現場に「見兎(みう)の森」プロジェクトを立ち上げました。

東京の一新塾メンバーも一緒に阿蘇に足を運び、地元の人とも交流を深めながら早野さんの志を鮮明に、地域の可能性を存分に引き出す挑戦が始まりました。

1000年前から人の手によって守られてきた阿蘇の草原に対しての感謝を深め、 「この土地を私たちの代で壊す事無く、次の世代につなぎたい」との思いで早野さんは阿蘇に戻ることを決意。この11月27日に阿蘇にUターン。見兎の森プロジェクトのネクストステージの幕が開きました。

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■■■■ 塾生活動レポート
■■■         『阿蘇にUターン』
■■       ~見兎の森プロジェクト始動!~
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■■■■               一新塾第27期本科
■■■■■□                  早野 慎哉

●阿蘇独自の生物多様性ーユニークな里山モデル

  九州の阿蘇は今も噴煙を上げる火山によって、世界最大級のカルデラが形成され、その上には日本一広大で優美な阿蘇の草原が広がっています。草原の
雨水の保水率は森林よりも大きいため、カルデラ内には数多く水源が存在し、 九州を流れる6つの一級河川の源流として、阿蘇だけでなく、その流域に暮らす 多くの人々の生活を支えています。

 豊富な水を作り出す草原を維持するには、牛馬の放牧、採草、野焼きなど地 域の人々の手が必要不可欠です。

 平安時代に書かれた「延喜式」に、阿蘇は良好な馬産地として知られ、広い 草原が存在することが記述されており、阿蘇の草原は1,000年前から人の手に よって守られて来ました。

 この草原は独自の生物多様性を育み、現在は600種の植物が生育し、草原性動 植物と人間が共生する一つのモデルとして、世界に誇るべき価値が有ります。

●見兎の森プロジェクトの立ち上げ

  見兎の森は、人と自然の共生関係が続いて行く事をビジョンに掲げています。 しかし、現状は多くの人が昔から続く農耕・牧畜を辞め、阿蘇を離れてしまい ました。阿蘇も日本の多くの過疎地域と同様の道をたどり、草原を維持する人々 の数が減っています。これでは共生関係が築けず、多様性が失われてしまいます。

 過疎化の原因を調べてみると、地域の人々は豊かな自然環境が身近すぎて、 草原があることが当たり前、綺麗な水があることが当たり前だと思ってしまって おり、自然の恩恵を受けて生活が成り立っていること、世界に誇るべき価値が 地域にあることを忘れていることがわかりました。

●阿蘇にUターン

  私の両親は、私が5歳の時に脱サラして南阿蘇に移住し、ペンションを経営し ています。移住のきっかけは、春に阿蘇を旅行中、ある小学校に出会ったこと です。木造平屋建ての小学校の周囲には桜が咲き乱れ、まるで絵本に出て来る ような佇まいで、こんな自然に囲まれた環境で私を育てたいと強く想ったそう です。そして移住を決意した後に、ペンション経営で生活していくことに決め ました。

 私は、その小学校に通い、山や川で遊ぶ毎日を過ごしましたが、田舎の不便 な生活が嫌で、いつも都会へ憧れを持っていました。大学進学でついに東京へ 行くことが出来ると、お金でサービスを買うような、便利な生活を送り毎日を 過ごしました。

 そんな生活の転換点は、設計事務所の仕事でした。東京の住宅設計事務所で は、施主の多くが自然と関わりある家を求めており、阿蘇の豊かな自然の中で 生活した経験や感性が大活躍し、そこで初めて阿蘇の価値に気付くことができ、 同時に阿蘇で育ったことに自信と誇りを持てるようになりました。特に、小さ い頃山や川の遊びの中で得た感性はかけがえの無い財産であり、阿蘇に連れて 来てくれた両親にとても感謝しています。

 この目覚めを地元の人にも連鎖させ、地元の人たちと阿蘇ならではの暮らし を創造してことが私のミッションだと考え、阿蘇に戻り、地域活動をすること を決意しました。

 阿蘇ではペンションの食事棟を担当し、地域のコミュニティースペースとなる カフェを新たに行います。

●阿蘇の未来を担う若者を増やす

  見兎の森が行うことは、地域の人々にその当たり前の生活は当たり前ではな く、資源は有限だと言うことを知ってもらうこと。そして、阿蘇の1,000年の 歴史と文化に誇りと郷土愛を持ち、阿蘇の未来を担ってくれる若者を増やすこと です。特に、職・住・育にフォーカスを当てた以下の活動を行って行きます。

職 <阿蘇ローカルガイドツアー>:
阿蘇の住人が、阿蘇の生活や文化などのローカルな体験を旅行者に提供し、 阿蘇の魅力を紹介するツアー。交流を通して、住人がより阿蘇の魅力を知る。

住 <ストロービレッジプロジェクト>:
草原で採れる大量のススキを建材として使い、自分たちの力で自分たちの家 を安価に建てる。地域ならではの持続的な暮らしと結い(ゆい)、催合(もやい) のコミュニティ力を取り戻す。まずは来年、100万円で自分の家を阿蘇の資源 を使って建てる。

育 <森のようちえん ねこのあくび>:
子供たちが、自然の中で思いっきり遊べる環境を提供する。季節の移ろい や自然環境の厳しさと美しさを五感で感じることで、自然の重要性を知る。 活動内容:散歩/川遊び/落ち葉遊び/パン作り教室/田植え/稲刈り/藁遊びetc

●現場で一モデルやってみる!

  地元の人は保守的で、見たものしか信じませんでした。私が何をしたいか、 それを行ってどうなりたいかを図面やイメージ写真を使って伝えても、伝わり ません。そもそも、なぜ変える必要があるのか、わかってもらえませんでした。

そこで心掛けたことはプロダクトアウトです。小さなことでも良いから、まず 行動すること。いきなり家を作る事は難しいけれど、小さなカフェ空間なら自分 で造れて、多くの人に気軽にススキの家体験が出来ると考えました。そこで 「わらカフェ」を作り、チラシやフェイスブック、ペンションのHPでお客さんを 集め、草原のススキで家が造れること、その可能性を伝えることに全力を注ぎ ました。

結果、多くのお客さんから「家が藁で造れるんですね。」「居心地良 いですね。」と感想をいただき、地元新聞の草原再生のコーナーに掲載しても らうことができました。地元の友達からは「新聞見たよ。面白いことをしてる ね!」と言ってもらえ、地元の人の多くの反響を戴くことが出来ました。来年 自宅を建てる時のコミュニティ作りへ繋がったと思います。

 私の活動が少しずつ地域の人々を目覚めさせ、都市部では経験できない地元 に住む事の楽しさを知る人が増え、阿蘇の価値を知って地域への誇りを持つよう になり、その誇りを次の世代につなげること。その永久的な目覚めの連鎖によって 人と自然の共生関係が続いて行くことが私のビジョンです。

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