☆〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓☆ 一新塾ニュース 【第81号】 発行日:2003年3月18日 ☆〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓☆ 「なぜ私は留学を思い立ったのか」 一新塾10期生 谷 匡治 ●一新塾との出会い 私は、昨年末に退職し、米国はサンディエゴに留学に来ている。ここに至る までに、日本の大学、大学院にてバイオテクノロジーを学び、国内食品会社の 医薬事業部にて3年弱、新薬の開発に携わってきた。一新塾との出会いはちょ うど社会人2年目を終えた頃である。元々、漠然とではあるが、社会に何かし ら役立つことがやりたいと思っていた。その思いと大学〜企業〜一新塾、この 間に出会った人々から得たこと、自分自身が感じてきた事が今の留学に強く繋 がっている。 ●1つの疑問 それらの経験を通して、1つの疑問に辿り着いた。それは、日本の大学では 世界でも十分に競争の出来る研究をしているにも拘らず、なぜ社会に還元出来 る技術がなかなか出てこないのかという疑問である。これは様々な点で問題を 孕んでいる。例えば、日本の大学で為された研究が欧米からの評価を受け、欧 米にて実用化への研究が推し進められ、その後日本の企業が輸入する。その結 果、新たな技術の恩恵を受けることが遅れるばかりか、欧米企業を介するため 特許料や契約金等が加味され、製品価格が高くならざるを得ない。また、大学 の研究費の多くは税金によるもの。つまり、国民の税金を使用して新たな技術 の種がまかれ、その実は欧米が収穫していく。他にも、新規産業の創生よる就 業の機会の増加の可能性を逸する。日本の技術が正当に評価されない(国際的 評価の失墜)、大学等の研究機関の重要性に対する国民の理解が減じることに より、基礎研究の縮小、結果として日本発の技術創生の土壌が失われていくな ど考えうる。 ●欧米における大学と企業の連携 日本の現状に対し、欧米(特に米国)に目を転じると、大学と企業との連携 が非常にうまくかみ合っているのが見てとれる。すなわち、「大学−ベンチャー 企業−大手企業」というパイプラインの存在である。新技術を実用化するにはnenn 高いリスクを背負う必要がある。勿論、欧米の大手企業が自国の大学と直接、 連携を保つこともあるようだ。しかし、彼らもリスクを背負うことを出来るだ け回避しようとする傾向は変わらない。そこで、このリスクを背負う存在とし て、ベンチャー企業がある。ベンチャー企業がリスクを背負い、新しい技術を 生み出し、大手企業が市場へ送り出す。これらで得られた利益は、税金という 形で国へ還元され、次世代の技術開発のために大学の研究費、ベンチャー企業 の開発費として投資される。米国が早期にかつ次々と新たな技術を生み出せる のも、このような環境があるからではないだろうか。 幸い国内においても、この問題を何とかしようという動きが活発になってい る。その代表的な例がアンジェスMG(株)といったベンチャー企業であり、TLO ではないだろうか。私の疑問の出発点は医薬業界の視点にあるが、恐らく他の 技術分野でも多かれ少なかれ同じことが言えるのではないかと思う。 ●留学を思い立つ さて、このような状況の中、私が留学を思い立ったのは、日本においても少し ずつ動きがあるものの、このままでは日本は益々欧米に押されてしまうと強く感 じたからである。先ずは米国のビジネス手法を学ばなければと。そして、その思 いを後押しして下さったのは、まさに一新塾であった。入塾後、実に多くの方々 に出会い、自分自身の狭い視野を広げることの必要性を痛快したことか。また、 自分自身から求めていけば、様々な機会も設けて頂けた。その一例として、アン ジェスMG(株)の方に直接お話を伺わせて頂ける機会を得た。その他にも、ビジ ネスには欠かせない官公庁関連の知識も多く蓄えることができた。 現在、まだまだ学んでいる最中である。将来的には日本及び米国で吸収したこ と、これらを総合的に取り込みながら、やがて、ビジネス面から日本をより良い 方向へ変化させることへ一役を担えればと考えている。 |
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