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        大前研一の一新塾ニュース  第58号 
       
          発行日:2002年5月3日

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「パーソン・スペシフィックの時代〜地方主権の扉が今開かれる」

キャッチアップ時代の国家の掲げた「均質的社会志向」から地域毎の個性や独自性を尊重する「地域差志向」へ。全ての自治体が中央政府に顔を向けていた「横並び型地域行政」から、自らの知恵と力で地域の個性を存分に発揮させ活力を生み出す「地域経営型行政」へと『地方主権』の模索が始まった。

長らく閉塞状況から脱皮できない日本の根源的な問題は何かと問われれば、それは、中央集権というシステムである。とにかく、このシステムのお陰で、個人も地域も企業も全て依存して生きることが染み付いてしまった。中央集権から地方主権への意味することは、まさに、個人、地域、企業が自律への道を歩み出すことに他ならない。

さて、26年前『企業参謀』を世に出し、マイケル・E・ポーターらが洗練を重ねる以前に、日本に「戦略論」を持ち込んだ大前研一塾長が以下の発言をしている。

「『戦略とは何か』と問われれば、もはやそれを定義しようと思わない。こうすれば企業は成功する、事業が上手く発展するという、経営学者の言うところのフレームワークでは、何も見えなければ、答もでない。」

 その理由を、かたちをとらえることができず、方向すらつかめない「見えない大陸」に入り込んでしまったからだという。それは、「実体経済」「グローバル経済」「サイバー経済」「マルチプル経済」という4つの次元の経済空間である。そして、この「見えない大陸」の時代に挑むためには、「パーソン・スペシフィック」(どんな資質を持つ人材がやるのか)にかかっているという。その人材がどんな構想を持ち、どの時代のどのタイミングに、一大奮起してやるか、“人材”こそが鍵を握るというのだ。

 当然、このことは『地方主権』を進める上で当てはまる。自主自立の精神を基盤とする「地方主権」実現の成否は、「権限」「財源」「人材」であるとよく議論されるが、そのうち、最も注目すべきなのが「人材」である。人材とは自治体職員、地方議員だけでなく、住民、企業、NPOのメンバーでもある。

 では、『地方主権』の時代にはどんな人材が求められるのだろうか。

 キャッチアップ時代は、法律制度に精通し中央省庁が策定する計画の内容をよく理解し、それを的確に運用できる力を備えた人材が求められた。80年代のまちづくりや地域おこし競争の際は、先進的な事例や情報を素早く吸収し巧みに応用出来る能力が注目された。

 『地方主権』の時代にはゼロベースでものを構想していく力、緻密な分析力、PLAN→DO→SEEで行動しながら自ら方法論を生み出す力が求められる。

 さらに、地域が持つ人材を最も効果的に活用するためには、“個々の人材の能力アップ”とともに、組織外の世界の異なる立場の人々の発想を柔軟に受け止め、また自分自身の考えもスムーズに他の世界に伝えられるコーディネーターとしてのスキルも重要である。バックグラウンドの違う個性溢れる活力ある人間同士が協働できる“地域協働型の自治システムの構築”こそが、『地方主権』時代の扉を開く“鍵”だと考えている。

                       森嶋伸夫(一新塾事務局長)


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