一新塾ニュース  第34号
発行日:2001年9月7日

「英国行きの飛行機にて」

高橋伸太郎(一新塾第8期・通信科)

今、私はロシア連邦ウラル山脈上空にいる。日本時間の7月14日昼過ぎに成田をたち、向かう先はロンドン・ヒースロー空港である。今回の渡英の目的は、英国のカレッジで英語と経営学を勉強することである。将来的には、大学院への進学も考えているので、具体的に帰国がいつになるかはまだわからない。今まで、私はアメリカの大学のプログラムを取っていたが、昨年の夏に英国へのトランスファー(編入)を決めたとき、なぜビジネスの本場であるアメリカから、英国に進路を変えたのか多くの人に聞かれた。それにはいくつか理由がある。

一つ目の理由は、アメリカや日本以外の国から世界を見たかったからである。日本から見ると、今の世界はアメリカを中心に回っているようなところがある。特に、私が強い関心を持っているベンチャー・ビジネスやインキュベーションの分野は、アメリカ西海岸、シリコンバレーが最先端である。また、日本で最近よく耳にする”グローバル・スタンダード”という言葉も、実質的には”アメリカン・スタンダード”である。しかし、私はそれらの現象に対して、違う視点で考えてみたいと昨年の夏ごろから思い始めていた。

グローバル化が進行する中で自分のアイデンティティを確立するためには、どうしたらいいのか研究しているうちに、私はある人物の来日を知った。それは、シンクタンクF.P.C.代表のマークレナード氏である。彼は若干25歳にして、ブレア政権の外交政策の中核メンバーとして活動し、ポールスミス氏やリチャードブランソン氏を巻き込んだクリエーティブタスクフォースを実現させた人物である。私は参加することができなかったが、彼が政治系インターンシップ団体のイベントで講演を行い、私はその講演録をあとから読んだ。その中で、彼は日本人が将来に対して過度に悲観していることや日本がもっと外に向かっていく必要があること、グローバル化の中での英国のアイデンティティの再構築、外交政策についての記事を読んだとき、私が目指すものはこれだと強い衝撃が走った。

二つ目の理由は、私が起業家を目指すきっかけになったヴァージン・グループ会長のリチャードブランソン氏が英国に拠点をおいていることである。彼はこれまで大企業が独占したきた市場−音楽、航空、鉄道など−に挑戦を続け、輝かしい成功を収めてきた。私が彼を知ったきっかけは、高校生のときに起業家向けの雑誌の連載で彼の特集を読んだことである。最も印象的だったことは、彼は10代のときから雑誌を創刊してビジネスをしていたことである。当時、私は高校生が中心になって編集・発行している雑誌の特派員をしていたので親近感を持ったことを覚えている。今回の渡英で、学校の事務局が手配した航空チケットがヴァージン・アトランティク航空だったことも運命的なことを感じる。

私は日本と英国は共通点が多いと考えている。大陸に近い島国であることや、議会制民主主義をとっていること、伝統的であること、帝国主義の時代があったこと、将来に対して悲観的であること、高いテクノロジーを持っていることなどがあげられる。そして、来年、日本と英国は日英同盟を締結して100周年を迎える。英国で何が私を待ち受けているかまだわからないが、日本から飛行機で15時間かかるこの国で何ができるのか楽しみである。



■編集室より
7月にイギリス留学に旅立った高橋さん。7期・8期連続受講の高橋さんは留学前には一新塾合宿の塾生企画・講義での司会進行役に積極的に挑戦してくれました。

一新塾ニュース編集担当 近藤芳樹


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