一新塾ニュース  第31号
発行日:2001年8月3日


「『企業参謀』を3度読む」
                       河合 拓(一新塾第8期生)

私の手元に一冊の本がある。「企業参謀」(大前研一)という名の本だ。実は今回で3度目の読書になるわけだが、3度目にして漸くこの本が手放せなくなった。

著者はこの本を30代の前半で書いたと言っているが驚きである。私のような凡人と比較すること自体がそもそも間違っているのであろうが、この本が伝えようとしているメッセージは、一般の人が30年で経験した以上のものがあると感じている。この本がなによりすばらしいのは、世にある経営理論と言われるもの類を、著者自身の着眼点から著者自身の言葉で伝えようとしているところにあると思う。世に氾濫するこの手の経営理論書の中でこの本が輝いて見えるのは、著者の言葉通り、著者自身が出会った問題意識や、問題解決の手法を、著者自身が考え、著者自身の思考プロセスで書き上げているからに他ならない。企業経営という枠組みから飛び出し、旅行や散髪といった日常的な問題意識から出発し、一般的に陥りやすい誤った思考プロセスを様々な視点から検証し、考え方の正しい筋道を解き明かしてくれる。確かに読み進むにつれて、難易度は高くなり、読みこなすにはある程度の知識とセンスが必要であるが、「一寸先は闇」の世の中である今でこそ、ここに書かれている内容は我々一般サラリーマンが日常直面する問題意識とクロスする。なぜ、働いても働いても給与があがらないのか、なぜ、上司はむちゃなことばかりいうのか、なぜ、無駄だと分かっていて得意先に出向くのか?我々はこうした日常の問題意識を「所詮サラリーマンだから」という言葉でごまかしていないだろうか?我々はニンジンをひたすら追いかける馬ではない。「考える個人」である。この本は、一般には、戦略的思考の指南書という紹介がされているが、私は人生を主体的におくりたいと考えるサラリーマン全てに必要な、企業組織の中でいかにあるべきか、についての指南書であると考えている。

この本の読書のコツは、ここに書かれている内容がどれだけ自分の「身近な問題意識」とオーバラップできるかにあると思う。3度目の読書が終わった今、新しい発見を期待して4度目にチャレンジしたいと考えている。私はしがないサラリーマンであるが、この本を読み込むことで、著者の足下にでも近づけられればいいな、と期待している。そして、明日の仕事に少しでも役に立てられればな、と考えているのである。

河合 拓(かわい たく)1966年生まれ。
現在外資系コンサルティングファームに勤務。業務の傍ら趣味でMLを立ち上げ、現在会員は200人、学生や社会人などをあつめ、ファッションやアパレルについて日々ディスカッションを繰り返している。合宿やディスカッション会を通じて次世代の価値観をさぐる。 
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■編集室より

河合さんおすすめの『企業参謀』は、本間正人氏を講師に行う一新塾の研修合宿
「参謀養成講座」(8/13〜15)の課題図書となっており、参加者は当日ま
でに読破するのが宿題になっています。

一新塾ニュース編集担当 近藤芳樹