一新塾ニュース(第25号)
2001年5月25日号

「なぜ日本の政治はおもしろくないのか」

一新塾6・7期生 門脇 純

「世界や経済はダイナミックに動いているのに、どうして日本の政治はおもしろくないのか?」と疑問に思われることはありませんか?確かに、日本の政治が明確な政策を打ち出しているという実感はなく、閉塞しているという実感を持ちます。これには、次のような理由があるのだと分析します。

<原因その1 行政が政策(法案)を作成している>

 実は、日本で政策(法案)を作っているのはほとんどの場合、政治家ではなく行政 職員(中央官庁)なのです。選挙で選ばれたわけではない行政職員が政策(法案)を 作っていて、国会や衆議院・参議院の委員会(政策について専門的に検討する場)では、それらについて深く検討されていません。
 このような状況は明治時代からずっと続いてきました。そのため、日本では政治家が政策(法案)をつくるための環境が整備されていません。(例えば、アメリカでは 連邦議会議員一人当たり30人までの政策スタッフを国のお金で確保できます。これだけのスタッフがいれば、議員一人一人が十分に調査をして、政策をつくることができ るでしょう。しかし、日本ではわずかに3人の秘書が認められるだけです。これでは政策をつくるための調査もろくにできません。)その代わりに行政職員がつくっているのです。
 そして、行政には他の省庁が反対しない政策(法案)しかつくることができないため、本当に必要とされる政策がつくられないのです。だからおもしろくないのです。 政治主導で大胆かつ時代を先取りした政策(法案)をつくって、政治がおもしろくなってほしいと思います。

<原因その2 与党・自民党が明確な政策を打ち出せない>

 1955年から50年もの間政権を支えている自民党は多くの支持母体を抱えており、「みんな」の政党となっています。例えば、地方の農山村では、農家や建設業界などが支持母体です。また、様々な業界団体も支持母体となっています。しかし、ある重要な政策を実行し、誰かの利益となるようにするということは、しばしば他の誰かにとって不利益になる(もしくはそう思われる)ことがあります。しかし、広範囲にわ たる支持母体が控えていると、どれかの支持母体に不利益になりそうな政策は実施できないのです。例えば、小泉純一郎氏は「郵政事業民営化」を数年来提唱しつづけています。しかし、それがなかなか実現されないのは、全国各地の「特定郵便局」が自民党の利益団体の一つだからです。
 このような政治状況では、特定の利益団体を持たないサラリーマンなど、一般的な生活をしている「普通の」人たちが一番損をしているのかもしれません。

<原因その3 自民党に対抗できる野党がない>

 与党が重要な政策を実行できないという状態であれば、本来なら野党が選挙で過半数をとり、政権に就くはずです。(諸外国を見ても、ある政権下で問題が生じると、 野党が政権をとってその問題を改善するものです。)しかし、日本では1993年の細川政権を除けば、1955年から40年以上に渡って、ずっと自民党政権のままです。
 その原因の一つには、野党が支持を得る力がないということです。野党が自民党に代わる新しいビジョンや政策を打ち出し、さらにそれを本気でやるという姿勢を見せることができれば、野党が過半数をとることもできたはずです。しかし、日本の野党はしばしば目先の票をとることに固執し、世間の批判を恐れ、「政権に就く」という 目的を忘れているのではないでしょうか。
 また、日本では自民党が新たに生じる問題を次々と包含して対応することで、政権を維持してきたという面もあります。(最も顕著な例は、1960年代に工業化に取り残された地方農村部の要求を、公共事業の実施によって満たしてきたということです。)
 いたずらに野党を応援する意図ではありませんが、客観的に批判勢力としての野党がいないということは、民主主義にとって好ましい状況ではありません。競争により互いに切磋琢磨することが政党には求められます。

<原因その4 不公平な選挙制度>

 そのような政治状況に対して、国民が明確にその意思を選挙で示せば、政治も動かざるをえませんが、日本の投票率は低く(2000年6月25日の衆議院議員選挙の投票率は約62%)、政治離れがすすんでいます。多くの国民は政治についてヤル気をなくしているのではないでしょうか。
 現在の選挙制度は、国民の政治に対するヤル気を失わせている原因の一つと言えるでしょう。現在の選挙制度は、地域によって不公平で、国民一人一人に対して平等ではないからです。
 衆議院の選挙区割りは2000年12月から見直し作業が進められているので、参議院議員選挙の例を見てみます。都道府県別に人口を多い方から少ない方に並べると、人口が多い9都道府県(東京都、大阪府、神奈川県、愛知県、埼玉県、千葉県、北海道、 兵庫県、福岡県)だけで、人口の51%がいることになります。しかし、これらの都道府県に割り当てられている議員数はわずか33%に過ぎません。つまり、現在の選挙制度(選挙区割り)は人口の多い県にとって不利な区割りで、大都市の住民の声が反映されにくくなっていると言えます。また、議員一人に対する有権者数は、最高は千葉県の約147万人、最低は鳥取県の31万人で、その差は4.769倍あります。これは明らかに「不公平」だと言えます。これでは国民がヤル気を無くすのも仕方ないと思えます。

<さいごに>

 我々はよりよい社会にするため、政治を少しずつよくしていく必要があります。与党も野党もよい政策を提示して、よりよい政治決定が行われるようにするため、まずは一人でも多くの人が政治について関心を持ち、政治について意見をいい、それを政治家にも伝えるという、地道な活動を続けていくしかないと思います。 今の時代はインターネットを使うことで、普通の国民でも意見を表明し、ネットワークをつくることが簡単にできるようになりました。これは、「よりよい政治・よりよい社会」をつくろうとする市民にとってはチャンスです。
 最後に宣伝になりますが、私も含め、一新塾7期生有志により発足した、政策実現をめざす政策情報ハブサイト「BOOBOO」(http://www.booboojapan.net)も、「よりよい政治・よりよい社会」をつくろうとする活動を応援していきたいと思っています。意見・情報・協力者を募集しているので、まずはアクセスしてみて
ください。

(門脇 純  junk@mine.ne.jp


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