一新塾ニュース
2001年5月15日号(第24号)
『サラリーマンリカバリー』(大前研一著) ―仮説思考の大切さ 

経営状態が悪い会社では、経費削減として「昼休みには電気を消したり、コピーは裏表を使ったり」という意見が判で押したようにでてくる。そこで、経営者に「それでいくら削減できたのですか?」ときくと「ひと月23万円です」と答える。そこで「おたくの会社の赤字はいくらですか?」と聞くと「23億です」と言う。社員は暗い気持ちで仕事を続ける。

ここにも書かれてあるように、問題の本質をとらえられず、既成概念や常識にとらわれて、的はずれなことをしている例は枚挙にいとまがない。さらにこの本によると日本人は仮説型思考が苦手らしい。例えば、ある仮説を立てて「AはBである」と発言する。その後、実は「AはCである」ということが判明したら、日本人は「お前は最初Bと言ったじゃないか」と怒るのだそうだ。大前研一さんは、「仮説は仮説、間違ったっていいじゃないか」と述べているが、この言葉ほど我々が真摯に受け入れなければならない言葉はないと考える。

先日ある学生二人の会話を聞いて感じたことがあった。ある本について二人は会話をしていた。A君は「この本は面白かった」と言い、B君は「この本には賛成できない」と言った。どちらが正しいかという議論は、今回は意味がない。しかし、両者には決定的に違うことがあった。A君は本から知識を得ようとしており、B君は自分の考え方の検証をしようとしていた。A君は3つの異なる主張の本を読んだなら、「世の中にはいろいろな考えがあるのだな」と思うだろう。しかし、B君は本を読む前に「自分の仮説」を立てているので、本の中の情報を、この「仮説」合わせてながら「合っている」、「合っていない」と情報の仕訳作業はじめるのだ。自ら「かくあるべし」という仮説をもって情報の世界に入り込めば、雑多な情報も自分を中心とした情報のポジショニングが可能になる。読書から得られる知識は「知恵」に変わるというわけだ。

昔と今とで、言っていることが違っていることを恥ずかしく思う人がいるかもしれない。何を隠そう私もその一人である。しかし、我々は神様ではないし分かっているなら本来議論の必要などないはずだ。大前研一さんによれば、日本語はIF-仮定法が文法になく、逆に論理的思考のしっかりした国の言葉には仮定法という文法が必ずあるそうだ。If-仮定法とは「仮説思考プロセス」に他ならない。


河合 拓(かわい たく)1966年生まれ。
現在外資系コンサルティングファームに勤務。業務の傍ら趣味でMLを立ち上げ、
現在会員は200人、学生や社会人などをあつめ、ファッションやアパレルについて
日々ディスカッションを繰り返している。合宿やディスカッション会を通じて
次世代の価値観をさぐる。
HOME PAGE:http://www.iris.dti.ne.jp/~kawait
MAIL :kawait@iris.dti.ne.jp



■編集室より

第8期の最初の講義となる5月9日(水)、一新塾セミナールームは90名近い塾
生の熱気と活気に湧き上がりました。
トップバッターは台湾総統府国策顧問の金美齢氏。「一人一人の人間が本気になっ
てやれば、出来ないことなんてないんです」と凛として語るその姿は、塾生達を
大いに勇気づけました。


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