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        一新塾ニュース〜今のニッポンを変えろ!
         【第315号】 発行日:2007年12月11日
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 目次
  ■ 塾生活動レポート

  『「みちぶしんツアー in 小千谷」報告』
                        一新塾第20期  川良 麗子 氏
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 メルマガ読者の皆さま、こんにちは。事務局の森嶋です。

「原点は、2004年の新潟県中越地震。豪雪地の暮らし、共助の力に感動し、
  気付いたら人生が変わっていました。」今年の5月に入塾し、8月に
“新潟中越・やまさと交流プロジェクト”を立ち上げた20期生の川良麗子さん
  の言葉です。

 “新潟中越・やまさと交流プロジェクト”とは、川良さんが3年前から個人的
  に小千谷市との交流を続けてきた2004年の新潟県中越地震被災地である
  小千谷市の山間集落を舞台とし、都市住民との交流・協働による地域復興を
  図るプロジェクトです。4名の同志とともに立ち上げました。

 12月2日、3日には、『みちぶしんツアー in 小千谷 』を開催されました。
  今回のツアーの目的は次の2点です。

(1)過疎化、少子化、高齢化、さらに自然災害を、どのように中山間地が乗り
  切ろうとしているのか、現場を体感し、よそもの視点で問題意識を高めてもらう。
(2)実際の限界集落との共同作業(道普請)を通じて、具体的な交流の現場を
  持ってもらう。

 どんなツアーとなったのでしょうか?
  以下、川良さんの臨場感満点のツアー報告です!

 
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■■■■    塾生活動レポート
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■■     『みちぶしんツアー in 小千谷 』報告
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■                              一新塾第20期
□                新潟中越・やまさと交流PJ  川良 麗子

●みちぶしんツアーの「大誤算」

 12月2日の午後5時半、小千谷市戸屋集落の集会所。
  気付いたら、集落10世帯が総立ちになっていました。

 「ありがとう、ありがとう」
  若い町内会長さんが、いつの間にか男泣きしていました。

 「おれ、来年も戸屋に残るよ。また来てくれや」
  集落に残るまいか悩んでる、と言っていたおじいさんが、
  握手を求めてきました。

 これは別に、災害直後の自衛隊の活動でも、
  炊き出しの風景でもなんでもありません。
  初対面のよそもの7人と、集落10世帯が、
  半日だけ、一緒に汗を流して、笑って、酒を呑んだ、
  それだけのことだったはずでした。

 でも、わたしの3年間のさまざまな交流の中でも、
  これほど感謝と連帯の気持ちに溢れたコミュニティを見たのは、
  まさに、あのとき3年前の震災直後以来のことです。

 見送ってくれた集落と、去っていくわれわれ、
  そこに生まれていた絆は、まるで家族のそれのようで。
  これは、初めての「大誤算」でした。

●プロジェクトと集落の、「小さな成功体験」

 前日、わたしたちは、中越復興市民会議の稲垣さんに、
  旧山古志村を案内していただきながら、こんな話を聞いていました。

 中山間地への働きかけは2段階で考えること。
  まず、集落の意識を変えていくこと。
  保守的、排他的になりがちだけれど、
  よそものと恊働してみよう、新しいことを始めよう、
  という前向きな意識を持ってもらうのが大事。
  それができて初めて、次の具体的な仕組みづくりを考えられる。

 では、集落の意識を変えるには、どうするか。

 大上段な議論やビジョンありきではなくて、
  「小さな成功体験」「よそものとの共通体験」を重ねていくこと。
  この積み重ねが全てだよ、と。

 初対面のよそもの7人と集落10世帯。
  どちらにとっても、よい「成功体験」になりますように!

●「今まで、道普請に笑い声なんてなかった」

 翌日、祈るような気持ちで始まった道普請は、
  わたしの心配をよそに、メンバーそれぞれが
  それぞれの村人と勝手に仲良くなり、勝手に笑い合い、
  勝手に師弟関係を結び、とにかく和気あいあい。

 桜の苗木の冬囲い作業では、
  伝一さんと五助さんを先生に、
  「縄の結び方教室」が繰り広げられ、

 「さいの神」で使う茅の刈り出し作業では、
  栄一さんの軽トラックいっぱいに茅を刈り、
  荷台に乗り込んで、茅をリレーして神社に奉納し、

 午後いっぱいまでかかるはずだった作業は、
  途中にビール休憩を挟んだにも関わらず、
  笑いの絶えないまま12時までにきれいに片付いたのでした。

「道普請で笑い声が聞こえるなんてこと、なかったよ」
  ずっと寡黙に作業していたたかしさんが、
  最後に真顔で言ってくれた言葉が、心に残りました。

●この集落に出会えてよかった!

 その後の懇親会&忘年会では、
  0〜90歳の子どもからお年寄りまで40人が大集合。

 おかあさん方も、引退したじいちゃんたちも、
  7人の子どもたちも、よそものを疎んじる気配がなく、
  心からの笑顔を向けてくれていることがわかったとき、
  この集落に出会えたことを心から感謝している自分がいました。

 そして、参加メンバーが敬意と親しみを持って、
  集落と接してくれていることにも、自然と感謝をしていました。

 労働力の提供と、田舎暮らし体験・・・。
  そんな安易なトレードオフを考えていた自分が馬鹿らしくなりました。
  中山間地には、1000年かけて築いた「共助」という宝があります。
  豪雪を生き抜くためのその仕組みは、
  「これをしてやるから、あれをせよ」という
  安易なものでは決してありませんでした。

 集落全体がひとつの大きな家族であり、
  弱いものをみんなで守り、冬を乗り越え、春を歓ぶ。
  そこには、損得の気持ち以上の思いやりがあるように思います。
  わたしたちが不意に受け取ってしまったのは、
  そんななんとも無防備で、純粋な思いであり、
  切実な感謝のこころであったのではないかと思います。

 眼前の光景に呆然としながらも、
  町内会長さんの涙と、参加メンバーの笑顔を見て、
  3年間、小千谷に通っていて本当に良かった、
  きっと、戸屋とわたしたちの関係はもっと素晴らしいものになる、
  そう確信することができました。

 この機会を与えてくださった一新塾、プロジェクトメンバー、
  参加してくれた塾生のみなさん、一般の参加者のみなさん、
  そして、コーディネートしてくださった市役所・団体のみなさん、
  温かく受け入れてくださった戸屋のみなさんに、
  心から感謝したいと思います。

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【07冬の陣】みちぶしんツアー in 小千谷 実施概要

■主催 新潟中越やま・さと交流プロジェクト

■目的 (1)過疎化、少子化、高齢化、さらに自然災害を、
     どのように中山間地が乗り切ろうとしているのか、
     現場を体感し、よそもの視点で問題意識を高めてもらう。
     (2)実際の限界集落との共同作業(道普請)を通じて、
     具体的な交流の現場を持ってもらう。

■プログラム

【12月1日】

8:00  池袋駅東口 高速バス乗り場集合
8:05  高速バスにて出発   
12:07 小千谷ICに到着

 ●旧山古志村・被災地視察ツアー
   ガイド:稲垣文彦氏(中越復興市民会議)
   全村避難から3年が経過。
   水没した集落、移転した集落、再建された集落、
   それぞれの今をガイド付きで視察します。
   『掘るまいか』の中山隧道も訪問します。

17:00 川岸屋旅館

 ●問題解決ワークショップ
   テーマ:「過疎化、少子化、高齢化、自然災害を、
        中山間地はどのように乗り切るのか」(仮)
   視察した内容をもとに6つの箱を回し、気付きを共有、
   よそもの視点で「自分ならどうするか」解決策を考えます。

 ●まとめ
   ゲスト:稲垣文彦氏(中越復興市民会議)
   ワークショップでの提案内容について、
   地元の中間支援組織の代表である稲垣さんより
   コメントいただき、震災から3年間の歩み、地域の課題を
   語っていただきます。

20:00 ●懇親会 at古志の里
   ゲスト:稲垣文彦氏(中越復興市民会議)
       他、交渉中。

23:00 終了

【12月2日】

7:00 川岸屋旅館 出発
7:40 戸屋地域公民館 到着

8:00 林道川井線・林道小高線

 ●みちぶしん
   林道(全長2km)のU字溝の落ち葉かき
   桜の苗の冬囲い

12:00 戸屋地域公民館

 ●昼食&ヒアリング
   町内会長さん、役員の方から、
   集落のこと、震災復興など、
   地域の課題についてヒアリングします。

15:00 戸屋地域公民館
  (作業の進捗によって早まります)

 ●大懇親会
   集落の忘年会も兼ねた懇親会で、
   地域の方と交流し、共同作業の労をねぎらいます。
17:30 終了 
18:20 高速バスにて出発
22:20 池袋駅東口 高速バス乗り場 解散
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※参考情報

●道普請(みちぶしん)とは?

道路を作り、整え、保全する共同作業を指す言葉です。
都会に住む私たちにはピンと来ませんが、
家と家をつなぎ、家と田畑をつなぎ、
ため池と田んぼをつなぐ、水路を含めた道はすべて、
昔から村の家々が協同で守ってきた共有の財産です。

戸屋集落の場合、棚田へとつながる水路のメンテナンスが、
降雪前の冬支度のひとつとして今も恒例となっています。
春の雪解け時、水路に落ち葉や泥がたまっていると、
田んぼに水をひくことができず、田植えが遅れてしまいます。
雪が降る前のこの作業も、
この地方のコメ作りを支える重要な農作業というわけです。

●戸屋(とや)集落ってどんなとこ?

小千谷市の南、川口町との境にある山間の集落です。
3年前の震災で、自宅再建をあきらめた世帯が集落を離れ、
世帯数が17戸から10戸にまで減少しました。
しかし、役員会が元気、農業後継者や小学生がまだ残っているなど、
「底力はあるよ!」と市役所の担当の方も期待を寄せる集落です。

棚田のコシヒカリと、地元しか知らないビュースポットが自慢です。




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