一新塾ニュース
2001年1月26日号(第14号)

【第14回テーマ】 「フィリピンの市民パワーに見習おう!」
青山 貞一
環境総合研究所所長
一新塾アドバイザリーボードメンバー

●奈落の底にひた走る日本丸
 不要な公共事業への国債、地方債の発行による膨大な累積債務,選挙で当選するためにはなりふり構わぬ選挙制度改悪,いつになっても整理がつかない銀行やゼネコンの不良債権処理、その延長での株価の下落と円安、にもかかわらず日本の政治は、森政権の続発する閣僚スキャンダルにつぐスキャンダルなど、もうどうしようもないところにまで来ています。KSD疑獄はまさに、自民党の体質を如実に象徴する構造的な利権構造をあらわにしています。

●絵餅の行政改革
 なりものいりではじまった行政改革も名ばかり。看板を掛け替えただけの省庁再編は、結果的に省庁の権限を強め、立法府の行政コントロールはまったくの絵空となっています。国立大学やつくばの研究機関を独立行政法人化する一方で、30万人を越す民業圧迫の郵政3事業は温存しています。こんなのは行革とは言えません。看板をすげ替えただけです。政府がしていることの多くは、形を取り繕うビボウ策ばかりであり、結果的に余計な費用ばかりがかかっています。
 
●脱皮できない癒着談合体質
 あまりにも政治が腐敗し、自浄作用が期待できなく,さらに経済システムについても癒着談合体質,護送船団方式の改革が進まない現状に、多くのひとびとが無力を感じています。痛みを伴う構造改革は遅々として進みません。さらに本来、政治腐敗にまっさきに敏感で行動すべき学生は動かず、政府、政権批判の急先鋒でなければならない報道機関は、批判精神を忘れ、政権批判に及び腰しとなっています。これも日本社会の改革遅れの大きな原因であると思います。

●野党にどこまで期待できるか
 では現政権の代替となるべき野党がどうかといえば、ご承知のように仮に中央で現政権と対峙していても、地方議会では大政翼賛が日常化し、社会変革を標榜し活動しているNPO/NGOと敵対さえしているのです。不要で環境破壊をもたらす公共事業の促進に、オール与党のぬるま湯につかっています。諫早湾問題での長崎県議会しかり、静岡空港問題での静岡県議会しかり、愛知万博問題や中部国際空港建設問題での県議会しかりです。神戸空港建設の神戸市しかり、ワールドカップサッカー開催に血道を上げている横浜市しかりです。またおよそ循環型になじまない巨大な焼却炉建設を押し進める全国自治体もしかりです。

●フィリピンに遠く及ばぬ市民の意識と行動
 ところでこの1月,かつてマルコス大統領を倒しアキノ政権をつくった市民は、今度は無血の市民革命を成功させるという外電が飛び込んできました。腐敗した政権、政治を改革する市民のエネルギーは、世界有数と言ってよいでしょう。日本国民の政治意識は、フィリピンに遠く及びません。昨日の日刊現代1面に、日本国民も国会を包囲するデモをすべきだ! という記事を出していました。しかし、冷戦構造崩壊後、日本社会は間違いなく政治、経済、社会いずれも良い方向に行っているとは言えません。もちろん、わたくしは冷戦構造が良いなどとは思っていませんが、日本人全体が健全な批判精神すら失い、功利的で自己中心的となっている気がしてなりません。

●絶望の淵からの市民社会革命
 こう見てくると、今の日本、そして将来の日本は絶望的に見えますし、おそらく今のままでは絶望的であると思います。しかし、わたくしたちが健全な批判精神や怒りを取り戻し、おかしいと感じたことをそれぞれの現場で実践すれば思いのほか,日本社会の変革は可能となると思います。

 それは、たとえば田中康夫知事を成立させた長野県民のパワーであり、今後それを政策面で支援するシンクタンク,アドボカシーです。また国政についても小異をもちつつ大同につく野党の結集です。

 今年は多くの自治体で知事選があります。また夏には参議院選挙があります。そこでは、ダメな候補者,政治家を落とすこと、利権にめざとい政治家を落とすこととともに,若年層、無党派層をひきつける従来の政党を超える政治家づくりも大切だと思います。もちろん日本社会変革にとっての万能速効の処方箋などありませんが、あきらめてはおしまいです。

 わたくしたちは、今こそ,アジアの隣国フィリピンの市民パワーを見習い、腐敗した政治と不作為の官僚機構を葬り去らねばなりません。 


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